《問32》法人税における貸倒損失の取扱いに関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、各選択肢において、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。
- 取引先A社に対して貸付金200万円を有しているが、A社の債務超過の状態が相当期間継続し、事業好転の見通しもなく、その貸付金の弁済を受けることができないと認められるため、内容証明郵便により貸付金の全額を免除する旨をA社に通知した。この場合、債務免除をした金額の全額が貸倒損失として認められる。
- 遠方にある取引先B社に対して売掛金5万円を有しているが、再三支払の督促をしても弁済がなされず、また取立てに要する旅費等が10万円程度かかると見込まれ、同一地域に他の債務者はいない。この場合、売掛金5万円の全額が貸倒損失として認められる。
- 継続的な取引を行っていた取引先C社に対して貸付金400万円を有しているが、C社の資産状況、支払能力等が悪化したためにC社との取引を停止し、貸付金の回収ができないまま取引を停止してから1年以上が経過した。この場合、貸付金400万円から備忘価額を控除した残額が貸倒損失として認められる。
- 取引先D社に対して貸付金600万円を有しているが、D社の資産状況、支払能力等からその全額が回収できないことが明らかとなった。この貸付金に係る担保物がある場合、貸付金600万円から担保物の処分可能見込額を控除した残額が貸倒損失として認められる。
[正解] 1 (適切)
- 取引先A社に対して貸付金200万円を有しているが、A社の債務超過の状態が相当期間継続し、事業好転の見通しもなく、その貸付金の弁済を受けることができないと認められるため、内容証明郵便により貸付金の全額を免除する旨をA社に通知した。この場合、債務免除をした金額の全額が貸倒損失として認められる。
- 遠方にある取引先B社に対して売掛金5万円を有しているが、再三支払の督促をしても弁済がなされず、また取立てに要する旅費等が10万円程度かかると見込まれ、同一地域に他の債務者はいない。この場合、売掛金5万円の全額が貸倒損失として認められる。
- 継続的な取引を行っていた取引先C社に対して貸付金400万円を有しているが、C社の資産状況、支払能力等が悪化したためにC社との取引を停止し、貸付金の回収ができないまま取引を停止してから1年以上が経過した。この場合、貸付金400万円から備忘価額を控除した残額が貸倒損失として認められる。
- 取引先D社に対して貸付金600万円を有しているが、D社の資産状況、支払能力等からその全額が回収できないことが明らかとなった。この貸付金に係る担保物がある場合、貸付金600万円から担保物の処分可能見込額を控除した残額が貸倒損失として認められる。
[解説]
債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができない場合に、その債務者に対して、書面で明らかにした債務免除額は全額、貸倒損失として認められる。
[解説]
同一地域の債務者に対する売掛債権の総額が取立費用より少なく、支払を督促しても弁済がない場合、その債務者に対する売掛債権(貸付金などは除く)について、その売掛債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理をすることができる。備忘価額を控除した残額なので、全額でない。
[解説]
継続的な取引を行っていた債務者の資産状況、支払能力等が悪化したため、その債務者との取引を停止した場合において、その取引停止の時と最後の弁済の時などのうち最も遅い時から1年以上経過したとき、その債務者に対する売掛債権について、その売掛債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理をすることができる。しかし、売掛債権には貸付金を含めることはできない。
[解説]
金銭債権が回収不能となった場合、債務者の資産状況、支払能力等からその全額が回収できないことが明らかになり、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理することができる。ただし担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ損金経理はできない。